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カーボンニュートラルとは?意味から企業の取り組みまでわかりやすく解説

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「カーボンニュートラルに向けた取り組みを自社でも実施することになったけど、正直なところよくわかっていない。」という企業担当者の方は多いと思います。日本でも政府がカーボンニュートラル宣言をし、各企業はそれに向けた取り組みを行っていかなければいけないことは理解しているでしょう。

しかし、そもそも何をすることがカーボンニュートラルなのか?なぜカーボンニュートラルへの取り組みが必要なのか?そういったことを説明できる人は少ないのが現状です。今この記事を閲覧いただいているあなたは、そんな中で社内のカーボンニュートラルへの取り組みの担当になった方ではないでしょうか。今後自社で行う取り組みはもちろん、それを補助するためのシステムなどを挿入する際に、上司へその必要性を説かなければならないので、カーボンニュートラルについて情報収集を始めたという方もいるでしょう。この記事では、そのような企業担当者や、これからカーボンニュートラルについて学ぼうと情報を集めている方のために、カーボンニュートラルの基本をお伝えします。カーボンニュートラルとは何か、日本ではどのような政策が打ち出されているのか、具体的にカーボンニュートラルを達成するにはどのような方法があるのか、国内の企業の取り組みなどをご紹介ますので参考にしてみてください。

カーボンニュートラルとは

これからの地球環境を考えたときに、ひとつの大きなキーワードとして取り上げられるのが「カーボンニュートラル」です。この言葉は、環境問題に関心を持つ一部の人々だけでなく、企業や政策関係者にも広く用いられています。しかし、具体的にどういう意味を持つのか、またその目指すところは何なのかを理解している方は少ないかもしれません。

カーボンニュートラルとは、英語の’Carbon Neutral’からきた言葉であり、「炭素(CO2)が中性化される」ことをさします。もう少し具体的に説明をすると、私たちが日常生活で行っているさまざまな活動により排出される二酸化炭素の量と、それを吸収する量をバランスさせ、全体としてCO2の排出量がゼロまたはマイナスになる状態を指すのです。つまり、極力CO2を排出しないような行動を心掛ける一方で、排出されたCO2は植物による光合成や再生可能エネルギー源などを利用して「吸収」するという考え方なのです。

カーボンニュートラルの目指すところ

カーボンニュートラルが目指される理由は、「地球温暖化」を防ぐためです。地球温暖化の原因となる温室効果ガスの中でも、人間の活動によって排出される量が最も多い二酸化炭素。この二酸化炭素排出量をゼロにすることで、地球温暖化の進行を食い止めようとする考え方がカーボンニュートラルです。そのため、カーボンニュートラルを達成するためには、日常生活やビジネスの中でのCO2排出量を意識的に抑えるとともに、森林の保全や植林活動、再生可能エネルギーの普及などによりCO2を吸収する手段を積極的に行っていく必要があります。

CO2排出量とカーボンニュートラルの関連性

さて、ここでひとつ注目すべきは、「カーボンニュートラル=CO2排出量0」というわけではない、という点です。もちろん、CO2を排出しないことが理想とは言え、現実的にはすべての人間活動がCO2排出を伴わないことはあり得ません。

そこで、人間が排出するCO2と、それを吸収する仕組みとがバランスを保つように努力することが求められます。具体的には、再生可能エネルギーやエネルギー効率の高い技術によって排出量を減らす一方、森林資源の保全や人工的な二酸化炭素吸収技術によって吸収量を増やすことが重要となります。

なぜカーボンニュートラルが重要なのか

ここ数年、一部の企業や地域が「カーボンニュートラル」を掲げるようになってきました。「カーボンニュートラル」とは、温暖化ガス(特に二酸化炭素)の排出量と吸収量を釣り合わせることで、地球温暖化の進行を食い止めるという概念です。

しかし、一部の企業や地域だけが実践するだけでは、地球全体の温暖化を食い止めるためには不足してしまいます。したがって、全世界が共通の課題として取り組むべき問題であり、その重要性は日増しに高まっているのです。

地球温暖化と二酸化炭素

地球温暖化の主な原因は、人間活動による二酸化炭素の排出です。工業革命以降、人類が化石燃料を大量に消費することで、二酸化炭素の量が増加し、地球全体の気温が上昇するという現象が起こりました。雪が溶けて海水面が上昇し、気候変動による異常気象が頻発するなど、様々な環境問題が顕在化してきています。このような地球規模の問題を解決するには、各国が一丸となって二酸化炭素の排出量を抑える努力が必要です。また、各個人が生活の中でできるCO2削減の行動をとることも求められています。

二酸化炭素の排出量と環境問題

さらに、二酸化炭素の排出量が増加すると、海洋酸性化や生物種の絶滅といった問題も生じます。海洋が二酸化炭素を吸収すると、海水が酸性化し、サンゴ礁や貝類などの生態系に深刻な影響を与えます。また、昆虫や植物などの生物種が絶滅すると、食物連鎖に影響を及ぼし、生態系全体が崩壊する可能性もあります。このような環境問題は、私たち人間の生活にも大きな影響を及ぼします。

カーボンニュートラルの進化と環境への影響

カーボンニュートラルに取り組むことは、上記の問題の解決につながります。CO2排出量を抑えるだけでなく、排出したCO2を吸収する手段も積極的に導入することが求められます。これには、森林の保全や再生可能エネルギーの普及、エネルギーセーブ表現の推進などが含まれます。これらの行動を通じて、地球上の温暖化を抑止し、環境問題の解決に寄与することが期待されます。また、カーボンニュートラルは、持続可能な未来に向けたステップでもあると言えるでしょう。

カーボンニュートラルの方法

ここまで、カーボンニュートラルの意味を説明してきました。それでは、具体的にはどのような方法でカーボンニュートラルを実現できるのでしょうか。

ここからは、カーボンニュートラルを目指す際の3つの主要な手段、すなわち省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの利用、そしてカーボンオフセットの実施について詳しく解説していきます。

省エネ設備の導入

ひとつめは「省エネ設備の導入」です。これはすでに多くの企業や家庭で実践されている、比較的取り組みやすい手段です。

具体的には、省エネ型の家電製品や設備を使うことで、照明や冷暖房、給湯などのエネルギー使用効率を高め、その結果として一酸化炭素の排出量を抑えることが可能になるのです。この手段は、一度省エネ設備を導入すれば長期的にコストも削減できるメリットもあります。また、エネルギー自体の消費量を減らすことで、エネルギー供給によるCO2排出も抑えることができるので、二重の意味でカーボンニュートラルに寄与するというわけです。

再生可能エネルギーの利用

ふたつめは「再生可能エネルギーの利用」です。再生可能エネルギーとは、風力、太陽光、水力、地熱など、継続的に利用可能なエネルギーのことを指します。これらは、燃料を用いて発電する化石燃料に比べてCO2排出量が極めて少ないため、カーボンニュートラルを目指す上で欠かせない存在となります。各国や企業が再生可能エネルギーの普及と展開に努めることで、地球の温暖化を抑えつつ、エネルギー供給を維持することができるのです。

カーボンオフセットの実施

最後は「カーボンオフセットの実施」です。カーボンオフセットとは、自身が排出した二酸化炭素の量を、森林の保全や再生可能エネルギー事業などを通じて削減・吸収することで、CO2排出量の増加を防ぐ取り組みのことを指します。

計算上は、自分が排出したCO2量と同じだけCO2排出を削減・吸収することで、自身のCO2排出は無かったことにするというわけです。これにより、個人や企業は自己のCO2排出に責任を持つとともに、それを減らすことへの意識も広がります。

日本におけるカーボンニュートラルの政策

カーボンニュートラルという概念は、現代社会で急速に注目を集めています。地球温暖化の深刻化により、我々の生活への影響も大きくなってきています。それを防ぐため、また持続可能な社会を実現するために、カーボンニュートラルが叫ばれています。しかし、その実現には各国の一致団結した取り組みと、それを支える政策が重要となります。特に技術先進国である日本における政策は、世界全体のカーボンニュートラル実現に大きな影響を及ぼすでしょう。

ここでは日本政府がどのようにこの課題に取り組んでいるのか、その具体的な内容とは何なのかを解説します。

2050年カーボンニュートラル宣言

2020年に日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。これは、2050年までに国内の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標です。

この宣言は、地球の気候変動に対する日本の姿勢を示すものであり、国内外で大きな話題となりました。しかし、目標達成には困難が伴います。エネルギー供給の大半を化石燃料が占める現状において、それをどう脱炭素化していくかが焦点となります。そのため、産業界や市民生活に大きな影響を及ぼす可能性があり、その対策として具体的にどのような政策が行われているのかも注目です。

地域脱炭素ロードマップ

先に紹介したカーボンニュートラル宣言を達成するには、国だけでなく地方とも協力した取り組みが不可欠です。このために、特に2030年までに集中して行う取り組みなどを中心に、工程と具体策をしました「地域脱炭素ロードマップ」が策定されました。

この地域脱炭素ロードマップでは、初めの5年間を集中期間として政策を総動員して地域を積極的に支援する計画になっており、100箇所の脱炭素先行地域を選定し、8つの重点対策を全国で実施します。そして、2030年までに全国で多くの「実行の脱炭素ドミノ」を起こすことで、2050年の脱炭素社会実現を目指します。

改正地球温暖化対策推進法

さらに、地球温暖化対策推進法の改正も2021年に成立しました。この法律は、地球温暖化の影響防止を図るための具体的な取り組みを盛り込んでいます。ここで重要なのは、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス削減を事業者だけでなく、国民全体で進めるという点です。具体的には、エネルギー効率化や再生可能エネルギーの普及、廃棄物の削減などが挙げられます。これらの取り組みにより、日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向けた一歩を踏み出しました。

カーボンニュートラルを目指す企業の取り組み

カーボンニュートラルを達成するためには、企業の積極的な取り組みが欠かせません。企業が率先して行うことで、従業員へ意識づけを行い個人でも脱炭素に向けた取り組みを促すだけでなく、企業のブランド価値や社員の士気向上、さらにはクライアントや消費者からの信頼も得られるでしょう。

企業がカーボンニュートラルを目指し、積極的に行動することは、社会全体の持続可能性に貢献するといえます。ここでは、大手企業のカーボンニュートラルに向けた取り組みを紹介します。

三井不動産株式会社

三井不動産株式会社では「2050年カーボンニュートラル達成」を目指し、グループの温室効果ガス排出量の2030年度と2050年度における削減目標を公表しました。

具体的には、建築物の省エネ設備導入や再生可能エネルギーの活用、エネルギーマネジメントシステムの導入など幅広い取り組みを実施しています。また、社員の意識向上のための啓発活動も積極的に行っており、持続可能な社会実現に向けた挑戦を続けています。企業理念に「持続可能な社会への貢献」と掲げて行動している三井不動産の取り組みは、他の企業にも大いに参考になるでしょう。

>>三井不動産株式会社/脱炭素社会実現への取り組み

イオン株式会社

流通業界の大手企業であるイオン株式会社も、カーボンニュートラル達成に向けた取り組みを行っています。店舗のエネルギー消費量を削減するための設備更新や省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの積極的な活用などを行っています。また、自社商品の開発においても、地球環境への負荷を低減するとともに、省資源・再資源をテーマにした商品を提供しています。社員一人ひとりが環境に配慮した行動を取ることを推奨し、社会全体でのカーボンニュートラルへの意識向上に努めています。

>>イオン 脱炭素ビジョン

阪急電鉄株式会社

阪急電鉄は、環境省と連携し日本初の「カーボンニュートラル・ステーション」を開業しました。この駅では太陽光発電、LED照明、雨水利用などの省エネ施設の導入によりCO2排出量の削減を行い、森林カーボンオフセットを利用して駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにする取り組みを進めています。

阪急阪神ホールディングス株式会社/カーボンニュートラル・ステーション 摂津市駅が開業しました。(2010.03.14 阪急電鉄)

カーボンニュートラルに向けた新技術

カーボンニュートラルの実現に向け、多くの新たな技術が日々開発されています。エネルギー効率の高いトランスポートシステム、建築、製造業など、あらゆる分野でのCO2排出削減に関連した技術の進歩は、私たちの未来を左右します。また、新しいエネルギー源や材料、製造手法、システムが継続的に研究され、開発されています。これら最先端の技術は、地球自体と人類の持続可能な未来に対する大いなる期待をもたらすからです。

CO2排出量を削減する新技術

CO2排出量を削減するための新技術には、さまざまなものがあります。例えば、再生可能エネルギー源を利用した電力供給システムや、エネルギー効率の高い建築材、さらには太陽光発電などのクリーンエネルギーを活用した技術なども含まれます。また、電気自動車や水素燃料電池自動車のような排出ガスの少ないトランスポートシステムの実用化も重要な要素となります。これらは排出される二酸化炭素量を大幅に削減する事ができます。

新エネルギーの開発と利用

新エネルギーの開発と利用に関連する新技術も注目されています。これらには、風力や太陽光、地熱、海洋エネルギーやバイオマスなどの再生可能エネルギーを利用するための技術が含まれます。更には、それらを安定的に供給するための格納・蓄電システムの開発も進んでいます。また、エネルギー消費の効率化・無駄の削減も新エネルギーの開発と利用にとって重要な要素であります。

カーボンニュートラル実現へ向けた科学の進歩

カーボンニュートラル実現へと向けて、科学技術の進歩は不可欠です。二酸化炭素を大気中から取り込み、他の有用な物質に変える技術や、太陽光を直接電力に変換する太陽電池の効率向上、ゼロエミッションの交通手段の開発など、さまざまな科学技術がカーボンニュートラルの実現に貢献しています。これらの技術的進歩により、未来の持続可能性へとつながる大きな一歩を踏み出す事となります。

カーボンニュートラルの国際的取り組み

ここまで、日本国内の動きや企業の取り組みを紹介してきました。では、世界的な動きはどうなっているのでしょうか。ここからは国際社会の取り組みを見ていきましょう。

パリ協定とカーボンニュートラル

カーボンニュートラルについて語る上で避けて通れないのが「パリ協定」です。パリ協定とは、2015年に国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の会合で採択された国際的な取り組みで、195ヵ国が参加しています。その目的は、地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量を減らし、地球の平均気温上昇を産業革命前の水準から2度以下、可能な限り1.5度以下に抑えるというものです。そしてその実現のために取り組むべき事柄のひとつとしてカーボンニュートラルが掲げられています。このパリ協定によって、多くの国がカーボンニュートラルを目標として掲げるようになりました。

世界の先進国の取り組み

世界の先進国においてもカーボンニュートラルへの取り組みが活発化しています。例えば欧州連合(EU)では、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを正式目標として掲げています。またアメリカも再びパリ協定に復帰し、地球環境の改善に全力を注いでいます。中国も先進国としての役割を果たし、国家全体で緑色経済を推進する方針を掲げており、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しています。

カーボンニュートラルへの国際社会の取り組みの現状

カーボンニュートラルへの国際社会の取り組みは、各国の政策や個々の企業や市民の行動の変化と共に進展しています。その一方で、地球規模での調整が求められる課題も多いのが現実です。直面しているのは、短期的な利益を追求することと長期的な環境保全とのバランスです。しかし、科学的な視点から見れば、地球温暖化を食い止めるためには、今後も各国が一丸となって持続的にカーボンニュートラルへの取り組みを深めていくことが求められています。

まとめ

これまでの情報を踏まえて、カーボンニュートラルという目指すべき状態を確認してきました。それは地球温暖化を食い止め、持続可能な地球環境を目指す上で欠かせない重要な概念です。二酸化炭素の排出と吸収がバランスする状態を示すこの考え方は、各国や企業が環境に配慮した行動をするために必要な基礎知識と言えるでしょう。しかし、これだけで満足するのではなく、もっと深く理解し、自分たちの生活や仕事に活かすことが大切です。

カーボンニュートラルは一見難しくみえるかもしれませんが、基本的には「人間活動による二酸化炭素排出量」と「地球自体が二酸化炭素を吸収する量」をバランスさせる、というシンプルなものです。しかし、私たちが生活する社会は複雑で、地球の生態系もそれほど単純ではありません。したがって、このバランスを達成するためには、二酸化炭素排出量を減らすだけでなく、地球自体の吸収能力を上げるための対策も同時に行う必要があります。このような統合的なアプローチが、カーボンニュートラルの本質的な理解につながるでしょう。

カーボンニュートラルを目指すためには、ただ知識を持つだけではなく、それを生活の中で具体的に活用することが求められます。それはエネルギー消費を抑えた生活を送ることから始まり、再生可能エネルギーの導入や地域のCO2排出量を削減する取り組みに参加するなどが含まれます。また、個々の行動だけでなく、社会全体での動きを理解し、それに対応することも重要です。これらの取り組みを続ける心構えが、持続可能な未来に向けた一歩となるでしょう。

カーボンニュートラルを目指すことは、私たち一人一人が未来のためにできる行動のひとつです。しかし、それは一人で達成できるものではなく、全ての人々、企業、そして国の共同努力が必要です。そして、この目標に向けて一歩踏み出すことこそが、持続可能な未来への道標であり、希望です。私たちは今、地球環境と向き合い、二酸化炭素排出量を減らし、持続可能な未来を築くための行動を起こすべき時代に生きています。それは私たち自身の生活をより豊かにするだけでなく、次世代に安心して暮らせる美しい地球を継承するために、私たち一人一人が持続可能な未来へ向けて一歩踏み出すときなのです。

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